〈三浦孝文×一条ヒカル〉ホストクラブも会社も共通?心を掴むリーダー論
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歌舞伎町でホストとして名を馳せた、一条ヒカルさんが学んだ仕事の流儀。そのエッセンスは、ホスト業界にしか通用しないものなのでしょうか。現在活躍中のビジネスパーソンとヒカルさんの対談を通じて、他業界との共通項を探るこの企画。第三回目のゲストはオイシックス・ラ・大地株式会社 HR本部 人材企画室 人材スカウトセクション マネージャー、三浦孝文さんです。
今回はホストクラブを運営するヒカルさんと企業人事として組織に向き合いながら、人事のコミュニティも運営する三浦さんから、それぞれの組織運営に通ずるノウハウを語っていただきます。マネジメントをされる立場のお2人が語る「心を掴むリーダー論」とは。
全く異なる領域で奮闘しているお2人は実は同年代。今回が初対面です。
30代前半といえば、どこの組織でもマネジメントを担うコアメンバーとなりうる時期。これからの時代を担う30代が考えるリーダー論は、同世代のビジネスパーソンや後輩世代にも参考になるヒントが満載でした。
誰よりも仕事を楽しむことで、信頼されるリーダーになれ
ヒカルさん:
僕がリーダーとして意識していることは、今まさにリーダー教育の一環で後輩たちに伝えてますね。
三浦さん:
リーダー教育ってどういうことをしているんですか?
ヒカルさん:
まず、スタンスから教えています。僕は、自分のことを上司だと思ってスタートすることが一番の勘違いだと思っていて。例えば、僕がAくんに役職を与えたとします。僕から任命されて彼自身は役職者になれた気かもしれないけど、一番重要なのは「他のメンバーが彼をどう見るか」なんです。メンバーが役職者だと認めていないのに、Aくんが役職者として振舞ってもチームがうまく回らないので。最初にこれを説明して、役職者になれるかどうかはメンバーからの目線が重要なんだということを理解してもらうようにしてます。
三浦さん:
目線の問題は、どの会社でもよく聞きます。僕はベンチャーの領域で3社目ですが、業界全体として採用した先の活躍や定着への意識が弱いケースが多いことに個人として課題を感じています。理由はおそらく、実績のある中途入社の人がいきなり役職を持って指導する側に回ってしまうことなんです。立ち上げフェーズから現場で動かしてきたメンバーからしたら、まだ上司だと認めていない状況だと思うので。だから、新しい人を迎えるときは、受け入れるほう、受け入れられるほう、両者に対してコミュニケーションの取り方を工夫しています。
ヒカルさん:
同じなんですね。僕は新しく役職を持つ人には、最初はリーダーになることが重要だって教えてます。「リーダーってどんな仕事か知ってる?」って聞くと、ほとんどの子が「メンバーに対して指導できること」って最初は答えるんですけど、それは上司の仕事なんです。だから、リーダーはメンバーと横に並んで一生懸命仕事をやっていて、それを一番楽しんでいる人だよって教えるんです。
三浦さん:
なるほど! リーダーってそれぞれの特性もあるけれど、共通項で持っていなきゃいけないのはそのようなマインドということですか?
ヒカルさん:
まさに。お店でイベントがある時は、「このイベント楽しそうだね!」とすごく前向きな発言をして一番頑張ってる。そしたら、自然とその人の周りに人が集まるようになります。そうなって初めてメンバーも、好きなリーダーの言うことだから話を聞こうと思ってくれるんですよ。
あとは浸透力と遂行力ですね。僕が言ったことを、素直に浸透率よく遂行してくれる人。「大きな声を出そう!」って言ったら、最初に大きな声を出してやってくれる人がいると、組織の文化がつくりやすいですね。
三浦さん:
意外と共通項ってありますね。ホストクラブも会社も人が集まって、お客様に喜んでもらうためにやっていることなので、そこに向き合うチームをどうやって良くするかっていう構造は似ているところがあって面白いですね。
チームで成功したいから、人間性を磨き続ける
ホストクラブって個人プレーが多いと思っていたのですが、ヒカルさんのグループはチームを大事にされているんですね。
ヒカルさん:
個人で強いのももちろん大事なんですけど、やっぱり個人には限界があるんですよ。
三浦さん:
そうですよね。個人で優秀な人って会社にもいるんですけど、その人ができることってやっぱり限られてしまうんですよね。「営業で売上を何十億つくりました!」と言っても、組織が作る何百億、それによってお客様に届けられる価値には勝てなかったりするじゃないですか。リーダーも一人でできることは限られるので、誰かに頼る、誰かとつくることは大事ですね。
ヒカルさん:
自分のお客様はもちろん、メンバーやメンバーのお客様を含めた全ての人を味方につけるような生き方をしていると、限界突破できる環境を周りが作ってくれることはあります。リーダーであるなしに関わらず、僕のことを良いと言ってくれる人が多いと僕の商品価値って上がるんです。
それに気づいている人が歌舞伎町でも1億円の売上を突破している人で。1億円の売上を上げられる人は、自然と周りの人を味方にしている人が多いですね。
三浦さん:
お店は関係なく、売れる人はそこが共通項なんですね。
ヒカルさん:
そうですね。うちのグループは人間性を育てることに気を使っていて、その結果として日頃の振る舞いにも差が出るので良い口コミが広がったんだと思います。お客様やメンバー、他社のホストさんでも良く言ってくださる方が多いです。地道に10年間、それを貫き通してきたから今がありますね。
三浦さん:
継続していると大きくなる瞬間はありますよね。 僕は「人事ごった煮会」という1000人規模のコミュニティを社外で運営していますが、本当に最初のきっかけは小さな飲み会の幹事だったんです。そこから周りの要望に応えつつ、継続的に開催していたら、今の規模になりました。自分はあまり意図せずやってきたことでしたが、情報交換ができる会社や人が増えるのは、自分にとっても会社にとってもプラスなことなので良かったなと思ってます。
タテ・ヨコ・ナナメの関係で、“ぼっち”をつくらない意識をする
チームでの活動にメンバーを導く上で、お2人が意識していることはありますか?
三浦さん:
前提として意識しているのは、一人一人のバックグラウンドを会社として把握することですね。それによってコミュニケーションの取り方も変わってくると思ってます。
ヒカルさん:
その情報ってどうやって聞き取るんですか?
三浦さん:
わかりやすく1on1やチームランチをやります。目標を決めるような面談もあれば、雑談するだけの時もあるんです。頻度はそれぞれ月1〜2回ですが、定期的に雑談する機会があると、今のお互いの状況を理解できますよね。
僕はチームメンバーが6名程ですが、ママ社員や兼業社員、スペシャリストや派遣社員の方がいて、バックグラウンドが全然違うんです。でも土台のコミュニケーションが取れていると、何かあった時に頼りやすいし、踏み込みやすいのはあります。
ヒカルさん:
僕も以前はできている自信があったんですけど、今はメンバーも増えているので、僕が直接聞くことが難しくなっています。各店舗にリーダーを置いて代わりに面談をしてもらっていますが、ちょっと時差が出ちゃうことがあるんですよね…。
三浦さん:
階層が生まれると距離ができてしまうのは、会社でもありますね。でも大事なのは、“ぼっち”をつくらないことだと思っていて。何かあったときに必ずしも直属の上司が対応する必要はないと思っています。その代わり、一人一人に合ったコミュニケーションができる人をフォローに入れたら良いと思っています。
目的を持ってプライドを捨てられる人であれ
お2人が思う、成功できる人ってどんな方だと思いますか?
ヒカルさん:
人もお店も波があって、調子が良い時は何をやっても上手くいくんです。でも、ガクッと売上が下がった時にどうするかが一番重要で。
例えばホストクラブでも、プレイヤー時代には成功していたのに、独立に失敗する人が多いんです。その理由は恐らく、2つあると思ってます。1つは売上が下がった原因を自分の内に認めていないこと、もう1つはどん底から売上を回復させた経験がないことです。本当に調子が悪くなった時の行動こそ大事だと思っていて。人生失敗するかどうかの時に、人間性が問われるというか。そこを踏ん張れるかが重要だと思います。
三浦さん:
あー、一緒ですね。うちの役員も採用面接で、その人がどんな修羅場体験をして、どんな行動をしてきたのかはめちゃめちゃ聞きます。特に、逆境というか修羅場の時に、逃げずに何か変えようと頑張ってきた人が、うちの会社には多いです。
うちの会社(当時はオイシックス)は2000年に始まったんです。その時期にインターネットで野菜を売っても、変な話ですが誰も買わないんですよ。生産者さんからみれば、インターネットって何? という世界。そもそも誰も野菜を売ってくれない。そんな時に、創業者の高島は自ら農家に行って、一緒に農作業して汗をかいてお酒を飲んでって泥臭いことをたくさんしたんです。その結果、「お前なんかよくわかんないけど、かわいそうだから野菜売ってやるよ」って思ってもらえて初めて会社が成り立ちました。やっぱりきれいごとだけでは会社も成り立たないので、自分が下がったときに頑張った体験は問われると思います。
ヒカルさん:
すごいですね!
三浦さん:
高島が書いた「ライフ・イズ・ベジタブル」という本にも書いてあるんですけど、創業者の高島は生産者さんに「土を食ってみろ」って言われて、本当に食べたような人です。生産者さんが土を食べることはないのですが、覚悟を試されたようです(笑)。でも、大きな目的があればそんなことは大したことじゃないって、自分のプライドを捨てられる人は強いですよね。
対談を終えての感想
三浦さん:
ホストの方とこの距離でお会いしてお話したのが初めてだったんですが、イメージと全然違いました。テレビで観るような押しの強い感じを勝手に想像していたので、実際にお話してみたら企業で真剣に人や組織に向き合っている方と話す感覚と同じで面白かったです。
同世代でもあるので、今後40歳や50歳になられたときに、どういう風に活躍されているんだろうっていうのはすごく興味があります。ホスト業界がどう変わるのかとか。そもそもホスト業界っていう位置づけじゃないのかもなとも考えちゃいましたね。新しいジャンルやグループになるかもしれないって、想像しながらお話ができて楽しかったです。ありがとうございました!
ヒカルさん:
オイシックス・ラ・大地の創業者の方が生産者さんの心を掴むために何度も何度も足を運んだというストーリーがとても刺さりました。こんなに立派な大企業の創業者の方だって第一歩はそこからだったんだぞっていうストーリーをくすぶっているメンバーに持って帰って話そうと思います。
あと、それぞれ違う組織でも共通点があって、共感していただけるということが嬉しかったですね。僕らは間違ってないぞって自信を持って現場に伝えられることが、すごく嬉しいです。
そして三浦さん。1on1であったり、チームのバックグラウンドを理解したいと話していたチームメンバーへの仲間意識と愛情に感銘でした。本当に人に対して責任感が強い方で勉強にしかなりませんでした。
ありがとうございました!
ヒカルさんは現在3店舗を統括する経営者としてご活躍されていますが、人をまとめるリーダーに必要なことは何でしょうか?