〈なつよ×一条ヒカル〉偏見からの脱却・これからのホストクラブの可能性|前編|
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歌舞伎町で名を馳せた一条ヒカルさんがホスト業で学んだ仕事の流儀は、他のビジネスにも通ずるのか? 他のビジネスにも活かせる法則を、現在活躍中のビジネスパーソンと対談形式で見つけていく本シリーズ。第四回目のゲストは海外事業プロデューサー陳暁 夏代(以下:なつよ)さんです。
なつよさんは先日、group BJの店舗「BLACK DIAMOND CLUB」に訪問されたそうです。ホストのイメージや歌舞伎町に対して率直に思うところ、その偏見を脱ぎ捨てる方法についてお聞きしました。
世間が抱くホストクラブのイメージとは?
なつよさん:
ホストクラブって世間的には旧来のイメージが強くて、すごくもったいないなと思います。この間group BJのお店に遊びに行った時に、未成年の方がノンアルコールで楽しそうに働いていたり、思っていたより全然怖くない。「今はそんな感じなんだ!」と驚きましたね。
新しいイメージを打ち立てようと様々な取り組みをしているのに、なかなか広まっていないですよね。
ヒカルさん:
そうですね。発信しても 「そんなこと言ってるけど嘘でしょ?」という目で見ている層も多いかなと。一回でも来ていただければ、理解してもらえると思うんですけど。
なつよさん:
そうですよね…。来るまでのハードルが高いんですよね。
ヒカルさん:
意外と低いんですけどね。初回だったら90分3000円で飲み放題なので。
なつよさん:
え、安い! 金額的なハードルは低いんですね。
ヒカルさん:
ただ、「それが落とし穴で、次からは高いんでしょ?」みたいな。
なつよさん:
ああ、その感覚はあります。
ヒカルさん:
サービス業ですから、また次回来ていただく努力をするのは他と変わらないはずなんですけど、なぜか「借金してまで来る場所」と思われてしまって。うちの会社では強要することはないんです。むしろ、お客様が「なんとしても来たい!」となってしまうのを防ぐためにも、ホスト側の人間教育はかなり大事にしています。
なつよさん:
なるほど!!
ヒカルさん:
お客様の心境やお金の状態を把握していないと、お客様にも迷惑がかかってしまう。接客をする中で上限を把握して、それ以上使っていただかないように工夫しています。
なつよさん:
そうだったんですね! 結果的にお客様も従業員も守っているってことですよね。
ヒカルさん:
そうです。
それは、歌舞伎町のあらゆるホストクラブがやっているんですか?
ヒカルさん:
教育がしっかりできているお店は、どちらも守れるように管理しているところが多いです。そうでないお店は時代的に衰退していってますね。SNSで、すべてが明るみに出るようになってきたので。
なつよさん:
うん。その流れは確実にありますね。でも明るみに出ることで偏見は少しずつ無くなるのでしょうか?
ヒカルさん:
偏見はなくならないと思います。でもホスト業界が偏見の塊だからこそ、「group BJは違うよね」となるのが僕たちの一番のゴールかなと思ってます。
なつよさん:
確かに宗教というか、思想を持ったところにすべてが原点回帰しだしているなと感じているので、ホストクラブも一周回って、カルチャーの1つとして捉えられていくことができるんじゃないかと。だからこそ、お金がかかるというデメリットを払拭できたらいいですよね。料金システムとか、開示された情報がネットに落ちてないから怖いんだと思います。
ヒカルさん:
なるほど。普通のバイトしながら毎回2~3万円の範囲で遊びに来てくれて、イベントには貯金していた分でシャンパンをというお客様もいらっしゃいました。事前に使える額を言ってくだされば、それに沿ったサービスを提供できるのですが、その仕組みが知られてないこと自体問題ですね。
なつよさん:
ですね。いつの間にか金額が上がっていくイメージがあるんですよ。この間友人と蛇カフェに行ったんですけど、蛇の指名に3000円、写真で3000円、テーブルチャージにドリンクが足されて結局1万円かかったんですよ!
ヒカルさん:
蛇に?!(笑)初回はうちのお店、誰と写真撮っても3000円なので安いですよ(笑)。
なつよさん:
蛇より安い(笑)。でも、明朗会計で抵抗感を薄めるとか、そういう工夫に力を入れるといいんじゃないかなと思います。
情報の総量がイメージを覆す
先程の話でもSNSでの発信が話題になりましたが、なつよさんが普段SNSの発信で気をつけていることはありますか?
なつよさん:
今日話そうと思ってたのが、日本から中国への偏見がホストに対する偏見と似ているという話で。普段SNSでも中国の話をするんですが、良いことを言うと「中国の肩を持っている」「国に帰れ」とか言われるんです。それって、ホスト業界に近い偏見だなと思っていて。
ヒカルさん:
確かに近いですね。
なつよさん:
人って良い悪いを情報の総数で判断していると思うんですよ。だから私は「良いことしか言わない」ようにしているんです。
ヒカルさん:
なるほど。
なつよさん:
世の中の中国情報の8割はネガティブですよね。だから私は今2割のポジティブ情報を増やして、ポジティブの総数を増やそうとしてます。それによって、興味本位でネガティブ情報を検索している人の気を逸らすのが私の使命だなと思っていて。
ヒカルさん:
僕のやっていることと近いですね。
なつよさん:
そうなんですよ。ホストクラブも「偏見はなくならない」って仰ってましたけど、なくす方法はあると思ってて。
ヒカルさん:
お聞きしたいです。
なつよさん:
例えば、ここのお店もいわゆる「既存ホストクラブの延長線上にあるゴージャス」なんですけど、まったくそうじゃない真っ白な空間とか、木造の空間とか、ふわふわの空間とか、そういう全然毛色の違う情報が可視化されて、画像や映像で世の中に出れば一気に皆の印象が変わるんじゃないかと。
ヒカルさん:
それは確かにイメージ違いますね!
なつよさん:
一時期、私服ホスト(ネオホスト)が結構メディアに出ていたじゃないですか。あれで私ホストの印象が変わったんですよ。でも、それもそんなに知られていないじゃないですか。
ヒカルさん:
そうですね。
なつよさん:
「ザ・ホストクラブ」みたいな近寄りがたい雰囲気を変えればいいと思うんです。例えばBLバー、コスプレバー、かわいい男の子だけを集めた恋愛シミュレーションバーとか。
ヒカルさん:
実際にあるんですか?
なつよさん:
あるんですよ。好きなシチュエーションを選べて、「今日は執事でお願いします」みたいな。たぶん料金システムがホストと近いんじゃないかな。
ヒカルさん:
へー! でも確かに料金システムは近そうですね。
なつよさん:
同じような料金システムなのにタイトルが違うだけで「コスプレバーに行ってみたい!」ってなるじゃないですか。ネーミングやカテゴライズを変えるってすごく効果的で。むしろそこにしか先入観や固定概念の障壁はない。人はタイトルで立ち止まり、タイトルで炎上するんです。実際は中身が変わっていなかったとしても、踏み込みの軽さは全然変わってくると思います。
ヒカルさん:
まずは知ってもらいたいので、まだまだ頑張れることはありそうです。
ギャップこそがイメージ変革の鍵
なつよさんがホストクラブをミレニアル世代向けにプロデュースするなら、どんな風にしますか?
なつよさん:
ここのお店(CLUB CLASSY)がまさにそうで、入って来た時にホストクラブだって全然思わなかったんですよ。
ヒカルさん:
本当ですか! うれしいです。
なつよさん:
渋谷にあるBershka/ベルシュカ(10代~20代前半に人気のアパレル)や、コンセプトカフェの内装とすごく似てますよね。壁に絵が書いてあったり額縁の鏡があったり。“映え”スポットの一つとして紹介したらそれだけでも十分だし、もっと今どきの女子が興奮するような見せ方ができるなって思います。
ヒカルさん:
ぜひなつよさんにプロデュースしていただきたいです!
なつよさん:
例えばこの店を全部畳にして、靴脱いで話すとか。滞在時間が長くなるので、商売としても良さそうですよね。私もそういうお店があったら行きたいです。友達も呼びやすいですし。
ヒカルさん:
それ大事ですよね。
なつよさん:
そう、今ホストに行こうと思っても、友達を呼びづらいんです。だから「一条ヒカルさんがいる」とか、「めっちゃイケメンだから会いに行こう」とか「畳の部屋とかあるらしい」とは理由がないと。ただ、みんなお金がかかるイメージを持っているので、「いくら持って行けばいいの?」って警戒しますよね。
ヒカルさん:
確かに、きっかけがないと来られないですよね。
なつよさん:
そう、だから名前を変えるのいいと思う! 畳バーとか。中身が同じでも名前を変えるだけで人の印象って変わりますから。畳を推しているわけではないですよ(笑)
ヒカルさん:
なんか女子会ができる場所の延長線上みたいですね。
なつよさん:
そういうのが欲しいですね!
ヒカルさん:
いやー面白い!
なつよさん:
やっぱギャップ大事ですよ。ギャップだけで新しいコンテンツになりますからね。
歌舞伎町とのギャップですか?
なつよさん:
そう。歌舞伎町とのギャップが大事だなって思ってて。最近『星のや』さんが、大阪の西成にホテルを作るって話題になったりしてたじゃないですか。それもギャップだと思うんですよ。「あんな意外性のあるところに高級旅館を作ったらどうなるの?」みたいな興味が湧くじゃないですか。
ヒカルさん:
確かに。ギャップ大事ですね!
タイトルを変えて偏見を脱ぎ捨てろ
今回のお話を踏まえて、偏見を脱ぎ捨てるにはどうしていけばいいのでしょうか?
なつよさん:
日本の刺青に対するネガティブな印象と同じだと思ってて、和彫もホストも理由なく怖がってる節があるじゃないですか。
ヒカルさん:
そうですね。
なつよさん:
でも海外から見ると、そういうイメージはまったくないんですよ。海外の人はおしゃれだと思って和彫をしてるし、日本の文脈とかもほとんど知らない人が多い。ホストもそのゼロ知識のところに位置づければこれからインバウンドが強化されるし、めちゃくちゃ脈あるなと思っていて。
だからこそ、この店みたいに既存のホストっぽくないお店にする。イメージとしては例えば中国のお客様には中国でいうクラブみたいな場所にすればいいと思うんです。そこで席に男の子がついて日本語の会話も楽しめる。中国のクラブは日本でいうキャバクラ/ホストクラブ・クラブが融合した施設になっていて。ダンスフロアとチャージ制の席の融合した施設が、あちらでいう一般的なクラブなんです。「踊る人は踊る・席で接客を楽しむ人は楽しむ」っていうのが同じ空間にある。
ホストだけ切り出しちゃうと急に風俗的にみなされますけど、カテゴライズを変えたおかげで今、中国では受け入れられているので、同じようにしたらイメージが変わってくると思います。みんなタイトルを見て判断しているので、そこを逆手に取って徐々にイメージを変えていければ偏見もなくなっていくんじゃないかなと思います。
ヒカルさん:
確かにそうですね。それができるように、頑張って作っていこうと思います!
なつよさん:
そしたら行きます!!
「ホストはホワイト企業へ、従業員やお客様への超メンタリング術」後編に続く
なつよさんは、世間が抱くホストクラブのイメージはどんなものだとお考えですか?