同伴にもアフターにも! 鉄板焼・お好み焼き 『じゅうじゅう』スペシャルインタビュー【「美味しい」歌舞伎町のレベルアップを目指して】
新宿区・歌舞伎町、「新宿」駅から徒歩5分。さくら通りを花道通りに向かって歩くと、左手に見えてくるのが鉄板焼き・お好み焼きの名店『じゅうじゅう』です。
今回はhoreru.com編集部が『じゅうじゅう』代表のタッキー坪井様に突撃インタビュー! お店の歴史や運営にかける思い、そして元ホストというご経歴の詳細まですべて伺ってまいりました。
『じゅうじゅう』看板メニューの写真とともにお届けいたしますので、ここから先はしっかり覚悟を決めてお読みください。読み終わるころにはおなかが空いてタッキーさんに会いたくなって、『じゅうじゅう』に行きたくて堪らなくなること間違いありません。
鉄板焼・お好み焼き 『じゅうじゅう』の歴史
──本日はどうぞよろしくお願いいたします! 早速ですが、じゅうじゅう様は10年続くお店とのことで……オープンしたのはどんな頃でしたか。
タッキーさん
『よろしくお願いします。オープンは2011年の3月末です。当時は東日本大震災の直後で……本当はホワイトデーにオープン予定だったんですが、自粛・延期しようかとなって、出だしからちょっとつまずきました』
──そうだったんですね。そんな困難を乗り越えられて今年10年目に入られたとのこと、おめでとうございます。歌舞伎町の老舗ですね。なぜこの街で鉄板焼き・お好み焼きのお店を始めようと思われたのでしょうか。
タッキーさん
『まず、僕はこの街には20歳からいまして。今から16年前の大学生の時に、自分で学費を払わないといけなくなって。当時メディアで話題になっていたし「歌舞伎町に行ってみようかなぁ」とホストを始めて。
一度ある程度お金が貯まったから辞めたんですが、夏休みにまた始めたら売れ行きが良くて。就職が決まってたんですけど「ホスト続けてみたらどう?」と悪魔の誘いがあり(笑)、22歳から2年間はレギュラーで毎日ホストの仕事をして、お店のナンバー1でもありましたし、代表代理としてお店を任されるまでになったんですよ』
──すごい……!
タッキーさん
『いえいえ。で、ここからが本題で、当時結局はホストがブームだったんですよね。でも自分の中では一生の仕事にするのに不安があって、社会に出てチャレンジできることを考えた時に、歌舞伎町のお客さんに向けたビジネスをやりたいと思ったんです。そこで今の僕の師匠が「一緒にやろうぜ」と声をかけてくれました。
おいしいと評判になるような飲食店を歌舞伎町で出したくて、僕も師匠もお好み焼き文化が好きだったので、お好み焼き屋をやろうということになり、ホストを辞めて2年位修業に出たんです。修業するうちに、ビジネス的にお酒を売る方がチャンスがあると気づき、だったらやっぱり鉄板のつまみや一品料理も勉強しなきゃなと思って、鉄板焼き屋でも働き始めました。トータルで3年ほど修業をして、そこからオープンしたという経緯です』
同伴に使えるお店『じゅうじゅう』
──コツコツと修業をされた成果としての出店だったのですね。
タッキーさん
『はい。今でこそおいしい店も歌舞伎町で増えてきましたけど、昔はちょっと値段 が高くて味も口に合わないなという店が多かったので、正直ホスト時代の自分としても、同伴で使える店があんまりなかったんですよ。で、そのあたりに僕はこだわりがあったから「じゃあ自分で作ればいい」と思いまして』
──そこでご自分で作るという発想になるのがすごいです。
タッキーさん
『今は違うんですけれども、当時はまだホストって、女性からお金を搾取するみたいな営業方針で売れちゃう人がいたりしたわけですよ。でも僕は、社会に出てもっと男性のお客さん達とも社会で関わりあってやっていきたかった。
だから僕はホスト上がりとして今の会社を立ち上げました。現在社員が20人いるんですけれども、元ホストも僕含めて数名いるんですよ。「元ホストもデキるんだ」というのを示したいですね。僕も「タッキー」なんて名乗っているのは源氏名 が「滝沢」だったからなんですよ』
タッキーさん
『「元ホスト」が社会的に叩かれるのは分かっていましたし、はじめは中々言い出せなかったんですが、飲食店として結果を残してからは、常連のお客様などお話をするようになったら少しずつ、言えるようになりました。店や自分にちょっと自信ができてきたから。
元ホストであっても、きちんと挨拶ができて仕事やサービスをしていれば、「ちゃんとしているんだな」と思われて、結果としてホスト業界の地位向上にもつながるかと思います。歌舞伎町で生きてきた自分にとってはそんな考えもあります』
震災直後のオープンからコロナ禍の現在まで
──自信につながるほどの成功をご自身の手でつくりだされたのですね。お店ができてから10年、過去から現在を振り返っていかがでしょうか。
タッキーさん
『いや、はじめの一年は歌舞伎町に助けられました。やっぱり現役ホストの時につながりがあった方々が、たくさん来てくれましたね。滝沢レオというのが僕の源氏名だったんですけども、「レオくんがやるなら」と深夜に14人も引き連れて来てくれたりして。彼らとは今でも仲良くやらせてもらっています。
最近は、歌舞伎町の引退したホストや経営者の方がご飯屋さんを出す時、プロデュースとして入りたいと思っていて。実際もう話が進んでいるプロジェクトもあります。それで歌舞伎町においしいお店が溢れたら僕は嬉しいです。「ちょっと年取ってきたな」と感じます(笑)。
あと、これまでのお客様のご要望をたくさん反映させてこの3月にお店を改装して、スタイリッシュで高級感のある、女性が喜ぶような感じにイメージチェンジしました。最近は、ホストに遊びに行く前の女性2人組なんかも来てくれます』
──ホストクラブはお酒がメインでしょうし、こちらでお腹満たしてから行くのはとってもいいですね! それにしても、コロナ禍でのリニューアルオープンだったのですね。
タッキーさん
『3月中旬にオープンしたと思ったら、感染症の影響で4月から5月末まで休業でした。今はまた、歌舞伎町のお客様に助けられています。とくに出前の浸透度はかなりあると思います。出前ってスピーディーな対応が求められると思うんですが、うちはレシピ重視な分ちょっと他店さんよりはゆっくりでちょっと値段もするんです。それでも味を信頼していただいて、注文いただいたりしています。料理で評価してもらえるのは嬉しいです』
──味のお話になりましたが、タッキーさんが全ての料理をするわけではないのですよね。従業員様にはどのような教育を?
タッキーさん
『いつお客様が来られても同じクオリティの商品を出せるように、料理は細かいところまで共有するようには努めています。
その上で、例えば調理担当者のとなりに立って「ちょっとそこ、なんでレシピと変えてるの!」なんて言うよりは、「そのやり方でその大きさでカットした方がおいしいね、こっちにしちゃおう」みたいな(笑)。みんなの意見を聞いたりして作ったほうが結局、やりがいも感じてもらえるというのはありますね』
雰囲気を大事にすることがモットー
──すごく柔軟考えをお持ちなんですね!
タッキーさん
『いえいえ。師匠は人の教育のプロなので、いまだに相談するのですが、ホスト時代に言われたのが「他店に飲みに行ってもつぶれるな、どんなお店でも良いところと悪いところが5個はあるから必ず見る癖をつけろ」と。これは今でも気をつけていて、他店さんに行くと「これはうちにはないやり方だ」とか「グラスはこういうものを使っているんだ」とか見るくせがついています。飲食店はこだわりが多いから、勉強にならないお店はほぼないですね』
──最近見つけた他店さんの良いところ、是非教えてください。
タッキーさん
『恵比寿で1番イケてる居酒屋さんのことなんですけれども、そのお店は開店から閉店まで毎日満席で、なのにスタッフは3人しかいないんですよ。で、何がすごいのかなと思ってみていると、3人のお客様への姿勢がやっぱり凄かった。お店の経営をする上で本当に大事な「雰囲気」はスタッフが作るので、改めて自店のスタッフには、お客様が来て良かったと思えるようなお店作りをしてほしいと願っています』
──やっぱり大事なのは「人」なんですね。ところで、このお仕事で大変なことはなんでしょうか。
タッキーさん
『うーん、この仕事は9割が準備ですが、仕込みをしてももしお客様が来なかったら無駄になってしまうというのはありますし、あと深夜帯に酔っ払ったお客様の接客をするのは大変です。でも僕はそのお客様が気持ちよく帰ってくれたらいいよねといつも言っていて。
「ちょっと酔っ払っててごめんね、でもおいしかったよ、実はいつも出前頼んでるんだよ」なんて言ってもらえたら、大変なことは嬉しいことに変わります。 だから大変なことと嬉しいことって、分かれてるようで結構一緒なんですよ。
やっぱりこの街は寂しがり屋が集まっていて、女性だけでなく男性もストレスを感じているんですよ。それをどこで解消するかって言ったら仲間との食事とか、お客様との食事とか、やっぱり「食べて飲む」というのは大事じゃないですか。うちの会社は歌舞伎町に今3業態の飲食店を出店していますが、それぞれにライバルが増えたら結局、歌舞伎町全体が美味しくなると考えています』
成長することを諦めない
──すべては歌舞伎町全体のレベルアップを目指すことにつながっていくんですね。
タッキーさん
『全部つながります。歌舞伎町の水商売の方々に10年後「歌舞伎町のお店はどこもおいしくなったよね、あのグループの人たちがそれを作り上げたんだよね」なんて言われるようになったら嬉しいです。今、歌舞伎町でたくさんの経営者たちと話をするのは、結局お客様の取り合いではなくいかに歌舞伎町に足を運んでもらえるか、とか、今は感染症の影響で叩かれたりもされるけれど、じゃあなぜ他の街では集客できているのかなとか、そういう話なんです。僕らが「夜の街だから」と一くくりにしたら、可能性があるはずのものも終わってしまうから。
歌舞伎町なんてまだ実際、始まって30~40年なんです。次の30年後を本気で考える人が集まれば、この街のイメージも変えられると思っています。だからホストの役割もキャバクラの役割も絶対にあるし、エンターテイメントバーももっとできれば外国人も増えるし。
「歌舞伎町の中だけでお客さんを取ろうとしたらだめだよね」というのはよく経営者同士で話しているんですけれども、本当にホスト上がりの人間がもっと東京のあらゆるところでお店を出して行けて、「元ホストってどこに行ってもデキるじゃん!」と言われるような人材が増えれば、嬉しいなって思います。
「大卒は就職しやすい」みたいな感じで「元ホストだから中途採用されやすい」というような世の中になってほしいですし、実際ご飯屋さんって結構「いい人」を作ると思うんですよ、僕は。いろんな家庭で育った人がいたり、学校で何かあったり、そういう訳ありの人が歌舞伎町には多いから。そんな人がご飯屋さんで成長して、また新しく社会に出たりしたら、楽しいじゃないですか』
──本当にそうですね。『じゅうじゅう』さんのスタッフさんも皆さんハキハキとなさっていて、気持ちがいいです。
タッキーさん
『スタッフには自信があるので! どんな人をうちの会社のどの店に連れて行っても、「いい人だね」って言われます。やっぱりそれが嬉しいです。まぁ、社長がこんなだから(笑)、みんなしっかりしてますよ。でもどんな会社にしたいかとか、お客様への接し方の基本の意識とか、すり合わせはもちろん必要だと思いますけどね』
──スタッフ様のことを誇れる社長、素敵です!
現役ホスト時代のエピソード
──ところで、せっかくですのでお伺いします。ホスト時代の思い出エピソードみたいなものはなにかありませんか?
タッキーさん
『そうですね……リシャールを注文してもらって、それをコーラ割りにして10分位で全部開けてしまって、お客様に怒られたりとか(笑)。あと、ダブル指名とか頂いてましたね。お友達同士の女性が2人で来て、2人とも僕を指名するという』
──えっ。あまりそういうケースは聞いたことがありませんでした。お友達の女性同士でケンカになりませんでしたか?
タッキーさん
『ならなかったですね。2人とも仲良く接するし両方のことを気にかけてどちらとも話をするし。あと当時在籍していたお店は歌舞伎町でもトップ5に入る人気のお店だったから、いつも満席でした。お店を気にいって来られる方も多かったんです。
今は1対1の接客が多いですよね、昔は仕事終わりの女性が3人組で来てホストを3人指名して6人で楽しむとか、 めちゃめちゃ多かったんですけどね 。忙しすぎて1対3で頑張ることもよくあって、あるときなんて7人組のお客様もいましたね(笑)』
──すごいです(笑)。タッキーさん、お酒がとても強そうです……。
タッキーさん
『弱くはないと思います(笑)。いい時代でしたよ。辞める当時は24歳だったので、「もっと稼いでからやめればいいじゃん!」なんて言われたりもしました。僕は正直、27歳くらいでお店を出して、失敗したとしても30歳手前でまた戻って来られると思ったので、チャレンジしてみてダメだったらダメだしと割り切っていました。気づいたらお店を出して10年経っていて……。この先の10年は楽しみですね』
「美味しいお店ばかりの街・歌舞伎町」を目指して
──この先の10年、どのようになさりたいですか。
タッキーさん
『本当に「歌舞伎町を美味しく」したいです。それから「元ホスト」ということが舐められないようにしたい。ホストで学んだ事は次の仕事にも生かせるんです。
それで言うと、最近のホストは人間ができている子が多いのが嬉しいです。多分いろんなグループさん同士の協力のおかげですよね。ホストという仕事を「アングラな商売としてではなく、もっと世間に認められる仕事にしていこうぜ」ということがだんだん教育されてきて、しっかりしたホストが増えていると思います。男として魅力あるなという方がずいぶん増えました』
──そのように男性から評価されるホスト、強いですよね。本当にこれからの10年が楽しみです。
鉄板焼き・お好み焼き『じゅうじゅう』情報
アクセス:新宿駅 徒歩5分
住所: 東京都新宿区歌舞伎町1-11-12 M1ビル 1階
連絡先: 03-6457-6486
営業時間:
[月〜土] PM18:00~AM4:30 (L.O. 3:30)
[日] PM18:00〜AM0:00 (L.O. 22:30)
※本記事のメニュー写真はすべて、じゅうじゅう様より提供いただきました