〈高木新平×一条ヒカル〉「誰でも1億円プレイヤー」を実現するマネジメント術|前編|
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歌舞伎町でホストとして名を馳せた一条ヒカルさんが、学んだ仕事の流儀。そのエッセンスは、ホスト業界にしか通じないものなのでしょうか。現在活躍中のビジネスパーソンとヒカルさんの対談を通じて、他業界との共通項を探る企画がスタートします。第一回目のゲストはNEWPEACE代表の高木新平さんです。
今回の対談は、一条ヒカルさんがご自身で書かれた記事【1億円プレイヤーが続々と生まれるホストクラブには「儲けの秘密」がある】を、高木さんが読んだことがきっかけで実現しました。「未経験から1億円プレイヤーを輩出する究極のマネジメント」をテーマにお伺いしていきます。
ホストになってまもなく「この道で生きていく」と決めた。
ヒカルさんはもともとホストがお嫌いだったとお伺いしたのですが、ホストになったきっかけを教えてもらえますか?
ヒカルさん:
僕、もともと美容師だったんです。美容師といえば原宿表参道という時代で、新宿自体も嫌いでした。
高木さん:
なんかわかります。カルチャーが大きく違う感じはありましたよね。
ヒカルさん:
同じ年の子たちより早い時期から働き始めていたので、技術には少し自信がありました。地方から代官山の有名店に転職が決まったタイミングでたまたまホストクラブを紹介していただいて、初めて自分の目で見たその世界が面白いと感じました。美容師の仕事は1年くらい抜けてもいいかなって、気軽な気持ちではじめたんですよね。
でも、思っていたよりうまくいかないんですよ。初めてNo.1になるまでに9ヶ月、そこから高額売り上げで注目されるようになるまでには、2年以上かかりました。
その2年で何が変わったのでしょうか?
ヒカルさん:
「この道で生きていく。」という覚悟ができたことですね。仕事への取り組み方、お客様への接し方が変わりました。従業員を見ていても、結果を出す人は覚悟が決まっているなと感じます。
高木さん:
その感覚、すごくわかります。
ヒカルさん:
同じ職種でも、覚悟があるかどうかで全く違いますよね。「ホスト業界を変えたい」とgroup BJに入ったものの、当時はまだ1店舗しかない小さな会社でした。歌舞伎町の中には暴力や詐欺まがいのことをやるホストもいて、そういうホストがいるお店にもなかなか勝てなかった。
悔しかったですよね。でも、僕らが誠心誠意お客様に対応しながらこの街で一番になり、有名になったら僕たちのやり方が正解になるじゃないですか。「そうすればこの街を変えていける。」そう思ったんです。
高木さん:
面白いなぁ。従来とやり方が全く違うんですよね?
ヒカルさん:
そうですね。歌舞伎町を変えたい、No.1になりたいというのは単に稼ぎたいという話ではなくて、働く子たちにとっての一番良い環境を作りたいということなんです。
ホストは30代になった時に、真価が問われる。
ヒカルさん:
20代は売れていたのに、30代になった途端に停滞するホストが、実は少なくありません。これは、売れたことで周囲から甘やかされてしまうことが主な原因ですが、多くはその理由を自覚していないと思います。
ホストって究極“自分が商品”なので、人間性を磨いていかないと売れ続けることは難しい。だから僕は「信号を待て。」と言っています。
高木さん:
信号ですか?
ヒカルさん:
はい。group BJでは歩きタバコ禁止などのルールがあるのですが、その中の1つに深夜であろうが周りに誰もいなかろうが、赤信号は待てというものがあります。
高木さん:
それをみんな素直に守るんですか!? どんな風に伝えているんでしょうか?
ヒカルさん:
「ギャップがお金につながる」と伝えています。ホストってイメージが悪いので、信用が薄いんですよ。だからこそルールを守る・約束を守ることをおろそかにしてはいけない。それがお客様からの信頼につながるし、何より人が見ていないところで約束を守ると、自分の自信になるんです。
自分に自信を持てると、人前に出た時も「俺はここまでやってる」って言えるじゃないですか。それが結果に繋がっていくところをスタッフも見ていて明確にわかるから、みんな守る。そうやって人間性を兼ね備えたホストが育っていきます。
高木さん:
なるほど! この間のnoteがすごく反響あったのも、売れるホストになる小手先のテクニック論じゃなくて、ホストこそシンプルで泥臭いことをやっているということが読者に伝わったからなんですね。
ヒカルさん:
そう言っていただけると嬉しいです。スタッフの人間性にこだわるうちのグループが歌舞伎町でNo.1を獲れば、歌舞伎町は変わると本気で思っています。
高木さん:
なるほど。個人が売れた話だけで終わらせないから、たくさんの方が応援してくれるんですね。僕のやっているVISIONING(ビジョニング)も社会的に対して「こういう社会をつくりたいんだ」と伝えて、応援してくれる仲間を増やす仕事なんですよ。
ヒカルさん:
VISIONINGですか?
高木さん:
はい。いわゆるブランディングと違って、実績をアピールするだけでなく「こういう社会や未来にしたい」と社会に向かって投げ、仲間を増やしていくことがVISIONINGの目的です。
話を聞いていて、まさに一条さんと同じだなと思いました。みんな過去の自慢話を言いたがるけど、それはその人を応援したくなる仕組みにはならないと思うんですよ。大きい課題を投げて、「みんなで変えていこうぜ」というのをヒカルさんは自然とやっているんだなと。
ヒカルさん:
そういうお言葉をいただけると、めちゃくちゃ嬉しいですね。
“自分を売れる”一流のスタッフを育てる育成術とは?
厳しいことで有名なgroup BJ には、未経験者ばかりが集まると伺いました。未経験からスタープレイヤーへ、どうやって育てているのですか?
ヒカルさん:
僕は自分という商品=人間性や生き方がお金に変わる仕事がホストだと思っていて、それは常に伝えています。うちが教育しているのは基本、人間性と生き方を磨くことだけです。
お金がない時の振る舞いには、生き方がもろに出ますよね。今の行動が未来につながると信じている子は、お金がなくても明るい。未来では稼げているという意識があるから、売上が上がりやすいんです。逆にお金がないと落ち込んでしまう子は、ビジョンがブレやすいんですよね。
振る舞いと結果が見えやすい世界だと思います。3カ月前に売れていたやつが全然売れなくなった時、その間の生き方を見返すと「やっぱりな」って思う点があるんですよ。答え合わせの回数が異常に多いので、正しいチョイスが自ずとわかるようになりました。
高木さん自身も経営者として社員を育てる立場ですが、育成で心がけていることはありますか?
高木さん:
自分の功績ではないですが、要望とサポートの両方をやることですね。おかげさまで、会社全体が家族みたいな関係になれた感じがあります。
ヒカルさん:
めっちゃ良いチームなんですね!
高木さん:
ありがとうございます。でも、僕だけだった時は恥ずかしながら離職率が半端なかったんですよ(笑)。綿密なサポート役がいてくれるおかげで心理的安全性が生まれて、定着率もアップしましたし、主体的な企画が増えました。あとは、そういう環境が整ったおかげで、コンプレックスをさらけ出しても大丈夫という空気ができました。
ヒカルさん:
わかります! ホストもコンプレックスを持っている子が多いんですけど、自分も言えない弱みさえもネタに変えてくれる仲間って結構居心地良いんですよ。「俺の一番嫌な部分を受け入れてくれた」ってなるんでしょうね。
高木さん:
そうなんです。コンプレックスはモチベーションだと思うんですよ。僕、生まれつき左手に障害があって、ずっとコンプレックスだったんです。半袖になることが嫌でロンTを着ていた中学時代、周りからダサいと思われてました。でも、ストリート系が流行してロンTブームが来たら、一気にかっこいいに変わった。「違いが価値になる」ってことに気がつきましたね。
その経験があるから、周りから「違う」と見られている人を応援したいっていう原動力になっていますね。過去は辛かったとしても、いまはつながりあえる人がいる。そうすればコンプレックスもポジティブに変換できますから。
ヒカルさん:
確かに。ホストも仕事のコンプレックスがある子ほど、反骨心を持って活躍していますからね。
誰でも売れっ子ホストに変えるマネジメント術。
高木さん:
でも、未経験だと全然キャラも何にもない子も来るわけですよね。反骨心だけじゃ売れっ子にするの難しくないですか?
ヒカルさん:
確かに個性が見つけられない子も多いですね。でも、自分で気がついていないだけで、必ず良いところはあるんですよ。僕がすることは、個性を作ってあげることです。
高木さん:
本人のやりたいことではなく、誰かに価値を感じてもらえるところを見つける感じですか?
ヒカルさん:
人によって違いますね。例えば「ホストはこれがウケるから」という意識で洋服を選ぶ子がいたら、「自分が一番かっこいいと思う服で来て。」と伝えます。実際に着てきたら、めちゃめちゃ褒めてその子のテンションを上げるんです。自分の好きなものを選んで褒められたら、嬉しいじゃないですか。
高木さん:
それは嬉しいですね。
ヒカルさん:
その子自身が楽しんでいると、お客さまはついてくる。自分のあり方がわかるようになります。一度そういう経験をすると、次からはアドバイスも素直に聞いてくれる。その繰り返しで個性が立って、振る舞い方がわかって、自分のターゲットもわかるようになるんです。もちろん全員に通用する方法ではないので、方法は男の子によって変えています。本当に何も主張がない子の場合は金髪にしたりして、外見から「変わる」ことを体験させていますね。
高木さん:
なるほどねー! 面白いな。こういう風にスタープレイヤーをどんどん作って、歌舞伎町を変えていってほしいですね。この間北海道知事になった元夕張市長みたいに。その人は夕張が財政破綻した後に市長になって、元は主流派じゃなかったけど、今回北海道自体を変えるというビジョンで知事になり、主流派になった。だからgroup BJ もそういうストーリーで歌舞伎町を変えてほしいですね。なんか未来はこっちでしょ、みたいな。
「レッテルを貼られにいって個性を磨け」後編に続く
今回初対面のお二人。同年代かつ富山出身で同郷ということもあり、懐かしい地元のエピソードですぐに打ち解けていました。
高木さん曰く、富山から東京に出てくるのは「北アフリカからニューヨークに来るレベルの出来事」。それだけガッツがあるとお互いに認め合います。
富山から上京後、原宿で美容師として働いていたヒカルさんがなぜホストになったのか、そしてホスト嫌いだった彼がなぜホストとして生きていくと決めたのか。そこから対談はスタートしました。