〈森本千賀子×一条ヒカル〉部下の成長を失速させない『上司力』

horeru.com Premium Contents

2019.12.03 特集

歌舞伎町で名を馳せた一条ヒカルさんがホスト業で学んだ仕事の流儀は、他のビジネスにも通ずるのか? 他のビジネスにも活かせる法則を、現在活躍中のビジネスパーソンと対談形式で見つけていく本シリーズ。第5回目のゲストは株式会社morich代表の森本千賀子(もりち)さんです。

リクルートでマネジメントを経験し、現在も経営者として人材紹介を行うなど、育成やコミュニケーションをずっと行ってきている森本さんをゲストに迎え、豊富なマネジメント経験をお持ちのお2人に、部下の成長を失速させない『上司力』について語っていただきました。

夜の世界もビジネスも「美徳」が成功への近道

森本さんは「銀座のママ」の経験があるそうなのですが、クラブとホストで運営方法やルールの違いはあるんでしょうか。

ヒカルさん

そうですね…。わかりやすい例でいうと、クラブやキャバクラには「指名替え」という制度がありますよね。でも、ホストクラブはルール上、誰かを指名したら永久指名なんです。

森本さん

あ、そうなんですね!

ヒカルさん

はい。だから指名が入る前は取り合いですけど、指名が決まったあとはいかに自店を好きになってくれるかが勝負。ライバルは他店になるんです。全員で担当を持ち上げて…。

森本さん

全員で接待する、と。

ヒカルさん

そうです。ホストクラブって、他の人が指名された卓でお酒を飲んでも自分の利益には直接返ってこないんですよ。だから人の卓で頑張るとか、ヘルプを頑張るということも仕事の一環としてやっていますね。こういう仕組みだからこそ、group BJではチームワークを大事にしています。

森本さん

なるほど。チームビルディングという意味では、すごく秀逸ですね! ちゃんとルールが機能している。

森本千賀子さん
1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒業後、現リクルートキャリア入社。
ベンチャー~大手企業まで多くの経営者との強いリレーションをべ―スに採用~組織課題を全方位にソリューションすることが強み。

2012年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」出演。2017年3月、株式会社morich設立、NPO理事、社外役員・顧問などパラレルキャリアを体現、さらに活動領域を広げる。「無敵の転職」(新星出版社)
など著書多数。
一条ヒカル(辻貴人)さん

1987年、富山県生まれ。歌舞伎町ホスト2万5000人のトップでgroup BJの幹部。
年間最高売上1億5000万円、4年連続で年間売上1億円突破。歌舞伎町でホストクラブ4店舗を経営する経営者でもある。

AbemaTVの『株式会社ニシノコンサル』に「ホストを憧れの職業にする」テーマで出演、渋谷ハロウィンでの早朝ゴミ拾いなどが話題になったホスト兼経営者。

最近3本note記事を執筆し、合計1700スキを超える反響を得ている。(2019年6月22日現在)

ヒカルさん

そうですね。うまくできているなと思います。

周りがサポートする仕組みがあっても、その人自身に「応援したくなるような人間力」がないと厳しいのかなと思うのですが、ヒカルさん自身はどのような工夫をされていましたか?

ヒカルさん

僕はgroup BJで教えられた「美徳に生きろ」という言葉通りコツコツやってきただけです。

森本さん

「美徳」ですか?

ヒカルさん

はい。赤信号は絶対渡らない・歩きタバコはしない・ゴミは拾う・悪口禁止、人としてやってはいけないことはやらないという基本的なことですね。

森本さん

へー! すごい! 本当に人間教育をされるグループなんですね。

ヒカルさん

そうなんです。確かにお客様が応援したくなっちゃうようなキャラ作り、ブランディングも意識はしていました。世間はホスト=色恋ってイメージですけど、「お前のこと好きだよ」って言ってお金を使ってくれるわけないじゃないですか。

森本さん

ですよね(笑)。

ヒカルさん

それよりも「なんかこの人すごいな」とか、「この人頑張ってるから、売上で応援してあげたいな」と思っていただくのが一番なんです。

森本さん

なるほど。

ヒカルさん

僕が最初にやったことは、音楽編集です。当時営業中にCDを流していたのですが、曲と曲の切れ目が気になっていたんですよね。

無音になると、お客様がふと我に返っちゃいそうですね…。

ヒカルさん

そうなんです。この無音が僕めちゃくちゃ嫌で。当時からシャンパンコールもオリジナルで制作していたのですが、無音部分は全てカットして編集していました。

森本さん

えー! それは素晴らしいですね!

ヒカルさん

そういう小さな行動を見て「頑張っているね」って、ファンというかお客様になってくださる方が多かったです。

成長株を“突き抜けさせる”マネジメント術

美徳についてはgroup BJ全体で教育していると思うのですが、それで売れはじめた成長株のメンバーに対して、さらに成長させる秘訣はありますか?

ヒカルさん

「この子をもうちょっと成長させたいな」というときは、セミナーをやってもらうようにしていますね。そうすると「みんなの前で言ったからには、自分がまずやらなきゃいけない」ってなるんで。

森本さん

それわかります! マネジメントですごい大事なポイントの1つが、そこだと思っていて。成長するタイミングで成功体験を積ませるとか、自分のブランドをつくるとか、そのお手伝いをするのはすごく大切だと思いますね。

成長株メンバーだと承認欲求が強くなることもあると思いますが、褒めるタイミングで意識されていることってありますか?

ヒカルさん

これ、森本さんにお聞きしたいです! 褒めるタイミングって難しくないですか? ちょっと間違うと調子に乗ってしまったりするし。

森本さん

わかります! 私もそれは気をつけていますね。うまくいっている子には、その子が目指している目標を明らかに超えたところに目標を用意しています。「◯◯はできたけど、この目標にはまだ到達できていない。でも近づいているよね」って。

ヒカルさん

こちらが素直に褒められるポイントを、用意しておくってことですよね。

森本さん

そうです。やらなきゃいけないことをやるのは当たり前で、そこで褒めてしまうと「それくらいで褒めてくれるんだ」ってなりますよね。だから「あなたが目指しているところより、もっと高いステージがあるんだよ」と教えてあげることで、さらに成長できる道筋を描いてあげるんです。

ヒカルさん

わかります! 僕もそうやってどんどん次のステージを設定するようにしています。

自己開示が良質な人間関係と成果をつくる鍵

中にはやり方を教えてもできない方もいると思うのですが、そういったメンバーはどうマネジメントされていますか?

ヒカルさん

これも森本さんにお伺いしたいです! そういう場合のテクニックってありますか?

森本さん

前職のリクルートにはモチベーションが高い人が多かったので、ビジョンやミッションを明確にしてあげれば、自走するタイプが多かったんです。でも、たまにモチベーションのスイッチがどこにあるのか…という人もいましたね。

ヒカルさん

確かにモチベーションを持てないと辛いですよね。

森本さん

ですね。でも大前提として私は信じていることがあって。それは「人は変われる」ってこと。

そう信じてくれるって素敵だし、安心して仕事ができますね。

森本さん

人が変わった瞬間を何度も見ているので。皆もともと全くやる気がなかったとか、そういう訳ではないんですよ。これは哲学でもよくいわれるんですけど、生まれ持って人というのは、「よりよくしたい、より成長したい」という「潜勢力(せんせいりょく)」を持っているんです。でも「お前はダメだ」って言われ続けると、それがドンと下がってしまう。

それを見つけて、もう1回持たせてあげるのが私の役割だと思って、向き合いますね。

ヒカルさん

どこで失ったのかを、聞いて見つけるんですか?

森本さん

そうです。どういう人生だったかというのを、プラスもマイナスも含めて全部聞くようにしていて。でも、いきなり聞いても話してくれないから、私のことから話します。

ヒカルさん

一緒です!

思わず意気投合して握手するお2人

森本さん

そうやって開示すると「ここまで話していいんだ」って急にオープンに話してくれるので、原因を見つけて再スタートを切って、伴走するっていう。

ヒカルさん

わかります。僕も「ヒカルさんは完璧」みたいに見られるんで、自分のダメな話とかを2人のときに話しますね。

森本さん

「今いるヒカルさんがすべてだ」って皆思いがちだけど、ここに至るまでのプロセスがありますもんね。

ヒカルさん

そうなんです(笑)。僕だって、失敗したり悩んだりした時期もありましたからね。

自己開示は、チームメンバー同士の人間関係がうまくいかないときにも使われたりしますか?

森本さん

はい。チームメンバー同士にも心理的安全性(本心を出せる状態や雰囲気)をつくるのが有効です。リクルートでよく行なっていた「自分史共有」という方法があるのですが、これまでの人生のモチベーション曲線を書いて、「そのときどう感じたか」「なぜモチベーションが下がってしまったのか」などをチーム全員で共有するんです。

話しているうちに泣き出してしまう人もいます。でもそうやって共有すると、失敗してもメンバー同士で受け止めあえるような体制ができるんですよね。

ヒカルさん

確かにそれができたらファミリーになれますよね! でも、さらけ出したくないという人はいないんですか?

森本さん

その質問すごくされるんですけど、意外とみんなさらけ出すものなんですよ(笑)。その方が働きやすくなったりするし。

ヒカルさん

確かに一緒に働くメンバーには、知ってもらった方が楽かもしれないですね。

森本さん

隣で働いていても案外知らないことは多いものですし、自分のルーツを知ってもらえると急に距離が近くなりますよ。

ヒカルさん

うちのお店でも、スタッフ同士でやってみます!

目標設定より、偶発性でキャリアをつくる

ヒカルさんは「ホスト業界のイメージを変える」ために活動されていますが、個人的な目標や夢はありますか?

ヒカルさん

正直に言うと、「ホスト業界のイメージを変える」ことだけを目指して一生懸命やってきたという感じなので、「あんまり個人のビジョンがなくて大丈夫なのかな」とは思っていたんですよね。

森本さん

わかります! でも、目の前のことやっていてもヒカルさんは大丈夫だと思う。スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱している『計画された偶発性理論』では、キャリアの8割は偶発的な出会いの結果から生まれているといわれているんです。

キャリアアップするには5つの要素が必要なんですが、お話を聞いていてヒカルさんはすべて備えているなと感じました。

ヒカルさん

本当ですか? 気になります。

森本さん

5つの要素は、1が好奇心。何事にも興味をもって楽しみながら取り組めること。2が継続性。諦めずに続けること。3が楽天的。最後にはなんとかなると思えること。

ヒカルさん

あー! もってこいです(笑)。

森本さん

ですよね(笑)。4が冒険心。うまくいくかどうかわからないけど、とりあえずやってみようという気持ち。最後の5が柔軟性。どれも当てはまってますよね。このまま目の前のことに取り組んでいけば、きっと大丈夫。

ヒカルさん

それを聞いてちょっと安心しました! お話を聞いていて5つの要素の中で僕に足りていない冒険心は、オーナーがカバーしてくれているだろうなって今思いました。「そこ行く? 」みたいなチャレンジをよくしているから。

森本さん

そうなんですね!でもヒカルさんがこれだけ素晴らしいから、育てたオーナーさんはすごいんでしょうね!

ヒカルさん

そうなんです。本当に悔しいんですけど、オーナーにはまだまだ勝てないんですよ。男の子として負けたくはないんですけど(笑)。

森本さん

ですよね(笑)。

ヒカルさん

4店舗も経営していると「独立しないの? 」と聞かれるんですけど、頑張っても勝てない相手が近くにいて学べる状況ってなかなかないので、僕は本当に恵まれているなと感じます。

森本さん

確かに自分がトップになると、学ぶことがなくなってしまいますよね。その師弟関係、本当に素晴らしいと思います! でも、ヒカルさんがオーナーさんを抜く日は来ますよ! 私伸びる人はわかるんです。

ヒカルさん

本当ですか? 嬉しいです! やる気をいただきました!

対談の感想

森本さん

本当にプロフェッショナルで素敵な方だなと感じました。こんな方が隣に座ってくれたらみんな惚れてしまいますね。これからのさらなるご活躍が楽しみです! ありがとうございました。

ヒカルさん

まさに僕の理想の女性です! オフィスに伺ってすぐに「丸裸にされた」って冗談交じりで言ってたんですけど、本当にオープンに話せて楽しかったです! 活力をいただきました! ありがとうございました。


取材・執筆 高下真美(https://twitter.com/t_mami134
編集・撮影 柴田佐世子(https://twitter.com/saayoo345

SHARE
twitter facebook Line hatena bookmark