【乗り越えよう、力を合わせて】「夜の街の朝活」発起人・一条ヒカル緊急インタビュー
2021年1月8日。group BJ ONE’S CREATION 一条ヒカル社長は Twitter で、group BJ 全店の営業時間の変更と、それにともなう自身の心情を発信しました。
文字通り「素直な気持ち」が綴られたこのツイートは反響を呼び、グループ外のホストたち業界人や、ホストに通う女性客たち、また他業界の人々の心にも届きました。
そこでhoreruでは今回、一条ヒカルさんご本人に緊急インタビューを敢行。このツイートに至った背景や、ツイートにはおさまり切らなかった思いを語っていただきました。そこからうかがい知ることができたのは、group BJ 全従業員たちの団結力、そして人間力の高さでした。
──今回は急なご依頼をしたにもかかわらず、ご都合をつけてくださりありがとうございます。早速ですが……今回、業界で一番最初に声明を出されていたかと思います。すごく早かったですよね。
一条ヒカル
『はい、緊急事態宣言の発表が1月7日で、8日から発令されましたが、4日くらいから宣言が出るのではないかと報道はされ始めていました。その頃から、20時以降の営業をするにしてもしないにしても、どちらにせよ声明を出そうとは思っていたんですよ』
──では4日の時点でもうご準備を始められていたのですね。
一条ヒカル
『そうですね。5日にはグループのトップ会議を緊急でして、どうするかを話し合いました』
──ものすごく早いですね……!
一条ヒカル
『早いというか、ちょうど group BJ は1月7日までお正月休みで、8日が年始営業日だったんですよ』
納得して従ったわけではない
一条ヒカル
『一番勘違いされたくないのが、僕たちは政府の要請に素直に従っているわけではないということです。今回の政府の要請に対して、僕も素人ながら色々勉強させていただいたんですけれども。例えば医療系にもうちょっとメス入れするとか、事業者への給付金だったりとか、もっと分かりやすく全員が納得するようなことができたのではという情報も入ってきたんです。
なので、まず納得している飲食店の方ってほぼいないんですよね。僕の周りにもいないですし、地方のお客様に聞いてみても、誰も今のこの政府のやり方に賛同してる人っていなくて。誰に対しての政策なんだろうとか……思うところがいっぱいあります。でも、そんなことを言っていても僕らのこの生活って保障されないじゃないですか。
だから今回、政府の言うことをただ聞くというのではなく、自分たちで考えたんです。今のこの緊急事態宣言のもと、従業員やお客様が安心してくれる、安全で楽しい営業をしていけるにはどうすればいいのか、というところから、会社でみんなで話し始めたんですよ。なのでこの時短営業も「これだったら今の時代、明るく楽しく前向きに仕事できるんじゃないか」という僕らの決断なんです。そこはちょっと、勘違いしてほしくないなと思います』
──政府の言うことに納得して営業時間を変更したわけではないと。
一条ヒカル
『納得はいっていないです。だから20時以降に営業している店舗さんが悪いとは全然思っていないし、僕たちも、20時以降の方が自分たちのやり方にフィットして、従業員もお客様も満足度高く営業できるのであれば、営業時間を戻す可能性もあります、むしろそれも考えています。もちろんどの時間帯でも、感染症対策をしっかりしている事はマストです』
group BJ は「思考を止めない」
──会議では、どのような過程を経て結論までたどり着かれたのでしょうか。
一条ヒカル
『一番最初に話し合ったのは、「お客様が後ろめたさなく僕らと会ってくれて、気持ちよく応援していただけるには」ということでした。緊急事態宣言の中、20時以降はお店に呼びづらいな、という空気って絶対あると思ったんです。それよりは、難しい時間ですが「16時から19時」という時間で挑戦する僕らってカッコいいんじゃないかとか、お客様に説明したら応援していただけるんじゃないかとか……そういうことに、ちょっと挑戦してみようという話になりました。
それで1月8日からチャレンジが始まったという感じですね。話し合っていくうちに、「これが自分たちのビジネスだ」「こういう企業努力をすべきなんだ」ということが見えてきて……それで皆でGOした、という。 だから従業員がいきいきとスタートダッシュで仕事をしてくれています。
決断にあたっては売上を落とすかも、などは全然考えていなくて、むしろこの時間で勝とうという挑戦の気持ちです。もちろん従業員たちにも色んな不安はたぶんあると思うんですけど、でもこの判断は悪くはなかったのかなと思います。ただし今のところは、ですけれども』
──「従業員は誰も文句も言わず納得してくれました」という声明の中の一文が、私も気になっていました。
一条ヒカル
『group BJ のいいなと思うところは、思考を止めない人が多いところです。政府の要請に、不満が残りつついやいや従うとか、無視して「大丈夫っしょ」とそのまま続けてしまうというのは、思考が止まっている状態なんですよね。自分たちで考えて決断していない。
一方 group BJ では、いろんなことを従業員もしてきているんです。たとえばお客様が来ないお店があるとすると、ただ口を開けて待つのではなく、「自分たちがどういう風に行動すればお客様に来ていただけるか」を考えるっていう。BJって、ゼロから1を作るのが得意な会社だと思います。そんなふうに思考が止まらない人が多いので、皆が色々考えてくれるんです 』
──group BJさんの中にいると、諦めたりせず悩みながらも行動する人間に成長できるということですね。
一条ヒカル
『はい。今回もトップが決めたこと、こうしてみないかと提案したことに対して、本当に自分で考えて、不平不満よりも「面白いチャレンジですね」と賛同してくれる人、「じゃあやってやりましょう」となった人しかいなかった。僕、これこそが人間教育だと思うんですよ。
たとえば20代からホストをやっていて、30代で僕みたいなホスト経営者だったりとか、はたまた違う業種に行ったりだとか、次のステージがみんなにあるわけですが。そうなったときに自分で考える力がなければ、おそらくこの時代、絶対乗り切れない。それにどんな天変地異があるかも分からないじゃないですか、生きていたら。そんなときに、自分で考えて乗り越えていく力がないと、結局倒れてしまうと思っていて……BJの教育は、それの訓練でもあるなっていう風に思います』
──人生力がつきますね!
一条ヒカル
『そうですね。本当に、僕自身にその力がついたと感じています、やっぱり』
時短営業初日の忘れられない光景
──まとめると、今回のことはヒカル社長一人のお考えではなく、皆さんで考えた上での総合判断だったということですね。
一条ヒカル
『そうそう、そうです。従業員の意見をもらって、group BJ 全体で考えました。BJは従業員ファーストなので、もしも彼らが20時からの営業で勝負したいと言っていたら、20時で勝負できる土台を作ってあげるのが会社の仕事だと思っています』
──今回はそうではなかったと。
一条ヒカル
『そうですね。16時からの営業で挑戦した方が面白いし、それにお客様にも応援いただきやすいんじゃないのかなっていうところは本音です』
──そうして16時からのご営業が始まったわけですが、お客様のお声などはヒカルさんに届いていますか?
一条ヒカル
『僕、営業初日がすごく印象に残っているんですけれども。1月8日に全店16時からスタートして、僕は1店舗1店舗まわったんですが、お店に入った僕を見るなりお客様が立ち上がって、「感動しました」って言ってくださって』
──ええ!
一条ヒカル
『その席には、20万を超えるシャンパンがもう置いてあって。ということが、なんと各店舗で起こったんです』
──なんと……。お話をお聞きしているこちらの胸も熱くなりました。
一条ヒカル
『そうですよね。僕も初日でもう目がウルウルしながら、めちゃくちゃ嬉しいなって思いました。従業員も「この時間で絶対勝ってやる」って改めて思ったみたいで。これが僕らの本質だな、この仕事ってやっぱりそうなんだよなと……応援されるような企業努力をして、人間力を自分で身に着けるのが、そもそも大事だよなって改めて実感できました。
僕、これを機に、従業員たちがかなり強くなれると思うんですよね。この仕事の本質、応援される側の本質というものをしっかりと勉強して成長することによって、すごく強くなれるんだろうなと。行動や発言、お客様の前にいるときの姿勢だったりとか、すごく変わるだろうなと思います』
──どう変わっていかれるかが楽しみですね!
一条ヒカル
『いやぁ、楽しみです』
──現状では、2月7日をめどに宣言解除ということですけれども……。
一条ヒカル
『おそらく延長だったり、はたまたもっと厳しくなるかなという覚悟はしています。ただ僕らもさすがに限界があるので、そうなったときは要請を無視などということではないのですが、もちろん感染対策はしっかりした上での、僕らのジャッジはあるんだろうなと思います。
僕たちも毎週会議をして従業員の声を拾ったり、街の様子を見ながら、今自分たちに一番フィットするやり方をやらせていただいています。お客様も、仕事を中抜けしたり、有給を使って来ていただいたりだとかもしていて』
──すごいですね!
一条ヒカル
『はい、そういうお客様も多いのですが、やっぱりこの期間だから応援してくださっているんだろうなと思います。ただこれが長引くと、お客様も来店回数が減ったりだとか、色んなことがあるのではないかと正直思っているので。そこは、自分たちの意見でいつでも変えることもできると考えています』
「夜の街」で明るく朝活
──ところで声明の中のハッシュタグ「夜の街の朝活」が話題です。これは group BJ のキャストさんが、今までより早い時間帯での食事同伴に使えるお店をお探しになるにあたって始められた、という理解で合っていますか?
一条ヒカル
『はい、僕たちも初めての時間での挑戦で、「16時にお店に来ていただくには同伴が命になるだろう」と思って。そこでふと、僕たちがそうであるように、飲食店の方々も時短営業で戸惑っているのではないかと気付いたんです。だったら、僕らは営業前にお客様とご飯を食べに行くということをしているので、「よろしければ使わせてください、ご連絡をください」ということを伝えて、許可を頂ける場合はお邪魔した際にSNSにアップして、みんなで共有させていただこうと思いいたりました。
それからもうひとつ意図があって、今回また「夜の街」というものがやり玉に挙げられて、ワード自体がネガティブなものになっている気がしたんです。そこで、いやいやそれはちょっと嫌だよね、どちらかといえばポジティブな意味合いで「夜の街」というワードを浸透させたいな、という思いをこめて、このハッシュタグを考えました。「お互いしんどい時期なので、夜の街で協力し合いませんか」というメッセージ性の強いものにしたつもりです』
──「夜の街」をポジティブに。そのような意味もあったのですね! やはりお時間帯が変わると、行けるお店も変わってきますか?
一条ヒカル
『はい、全然違います。僕も初めて行くお店ばっかりですが、お客様にもそれを楽しんでいただいています。この時間に開店しているお店の情報も最初はわからなかったのですが、今は僕らのもとにTwitter DMやリプライで情報をいただいたところを中心に、足を運んでいます。
あと、沖縄パラダイスさんという居酒屋さんは、もともと17時オープンで深夜帯に営業されてたんですけど、最初は要請を受けて休業しようとしていたみたいなんです。でも、僕たち勝負しているホストクラブがあるというのを知っていただいて「じゃあ自分たちも戦ってみよう」と、今ランチ営業をやっていらっしゃるんですよ』
──ホストクラブが居酒屋さんにも影響を!
一条ヒカル
『そういう意味では、やってよかったなと思います』
──素晴らしいお取り組みです。飲食店様へのメッセージはありますか。
一条ヒカル
『いえもう、是非僕たちに同伴で使わせてくださいということしかないです。僕らも、早い時間帯でこれまで行っていたお店が開店していなかったりして困っているので。是非ご連絡ください、よろしくお願いします。
あとこれは所感なんですが、お客さまとこの状況を楽しんでいるというのがポイントなんですよね。この時代に楽しめるって素敵だなと、色々と縛りがあるゲームの中で、攻略法を見つけて前向きに挑戦しているというのは楽しいなと思っています。
そういう努力を続けて行って、いつのまにかコロナが去ってたら、その期間中も楽しい思い出になるだろうなと感じています。今の機会だからこそこのお店に行ってみよう、となって新しい味に出会ったりだとか、そういうご縁も実際にあるんです。「夜の街の朝活」が、そういう活動になればいいなと思っています』
──ちなみに、group BJ 店舗様では今、この時短営業期間限定で、ご来店になったすべてのお客様にあるサービスをなさっているんですよね。
一条ヒカル
『はい、時短営業のなかお越しくださったお客様に感謝のしるしとして、ほすカフェ特製のお土産をお渡ししています。ささやかなものではありますが、「お客様に笑顔になっていただけることを」と group BJ 運営陣が考案しました』
──お土産、嬉しくなってしまいますね。こんな状況だからこそと、前向きにとらえて進み続ける皆様の姿勢に感銘を受けました。これからも学ばせてください。この度はインタビューをありがとうございました!