【「名プレイヤー名監督にならず」? 】2人の名プレイヤーがたどり着いた「超一流」を育てる極意【一条ヒカルのヒカル通信】
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「一条ヒカルが背中を追い続けた男」──。歌舞伎町に凱旋した伝説のホスト・鳳帝さんとの対談がこの度実現しました。
「人間力教育」で未経験者を一人前のホストに育て上げ、1億円プレイヤーを続々と送り出すgroup BJ ONE’S CREATION 一条ヒカル社長。そして、まだ歌舞伎町で「1000万プレイヤー」が珍しかった時代、軽やかにその壁を超え、月間指名100本・年間売上1億円を突破し続けた鳳帝さん。
鳳帝さんは、一時ホスト業界を離れるも、再び歌舞伎町へ。現在は個性豊かなプレイヤー達が在籍するCLUB ANARCHYのオーナーを務めています。
今回の対談では、プレイヤー時代、共に歌舞伎町の頂点を独走し続けたお2人だからこそ見える「一流たる姿」を紐解いていきます。経営者となったお2人の知られざる苦労や、その志とは。
「伝説なんて恥ずかしい」純粋に歌舞伎町を楽しみ続けた男・鳳帝
「帝さんに会えるなんて、この連載をやっていてよかった……」と、取材前からワクワクされていたヒカル社長。プレイヤー時代、直接の面識はなかったお二人ですが、お互いにどのような存在だったのでしょうか。当時を振り返ることから、対談は始まります。
一条ヒカル:
僕、今日をものすごく楽しみにしてきたんです!「鳳帝さん」と言ったら、僕が歌舞伎町に足を踏み入れた当時のスタープレイヤーですよ! 1000万プレイヤーがほとんどいなかった時代に、毎月指名本数100本超え・1000万以上を売り続けていた伝説です。
鳳帝:
めっちゃ光栄です!なんか接待対談みたい、大丈夫ですか?(笑)
一条ヒカル:
少し天狗なことを言うと、僕はグループ内でナンバーワンになった時に、身近には追いかけるべき目標が居なくなったと感じました。だから勝手に、歌舞伎町ナンバーワンの帝さんを追いかけていたんです。「毎月指名100本と1000万売りたい!」と意思表明をしまくっていたのも、完全に帝さんを意識してのことです。
鳳帝:
そんな風に思ってくださっていたんですねぇ。……プレイヤー時代は同業付き合いもなく、本当にただのびのびやっていたタイプだったので、知らなかったーっ!
逆に、帝さんがヒカルさんを認識し始めたのは、いつ頃だったのでしょうか?
一条ヒカル:
それ、めっちゃ聞きたいです。
鳳帝:
僕ね、ヒカルくんが頭角を現し始めた時のこと、覚えているんです。
一条ヒカル:
えーっ!
鳳帝:
お客様が被っていたこともあって、みんなが騒ぐわけですよ。「佐藤健くんに似た、めちゃくちゃイケメンで、マンガみたいなスタイルのホストがいる」って。「どんな人?」ってめっちゃ聞きましたよね(笑)。
一条ヒカル:
認識してもらっている……! 確かに、お客様が被ることは多かったです。当時うちの店はオープンから2時間は料金がお得なシステムだったんですけど、その時間にパッと来てくれるお客様はみんな、「この後(本命の)帝さんのところに行く」って言っていましたからね。
毎月の帝さんの売上をチェックして、「追いつきたい」って思い続けていました。僕、それこそ帝さんが歌舞伎町を離れてアパレルのデザイナーをしていた時のスーツ、買いましたからね!
鳳帝:
それも、実は知ってました(笑)。僕の好みだけを詰め込んだとんでもないスーツを……ありがとうございます(笑)。
帝さんからの影響を、たくさん受けていらしたんですね。
一条ヒカル:
ナンバーワンになっても朝一番に出勤し続けたことも、帝さんの真似です! ナンバー陣は出勤が遅いことが当たり前ですが、帝さんは絶対にオープンからいらっしゃると聞いて。
鳳帝:
え! 「売れる子ほど、出勤が早いものだよね」と思っていましたが、自分が参考にされているとは思いませんでしたね!
先ほどから感じていたのですが、外から「伝説」と呼ばれることに対して、ご自身ではあまり実感がない方ですか?
鳳帝:
違和感しかないですよ! 純粋にホストの仕事を楽しんでいただけなので、全くピンと来ない。言うなれば、「伝説」はお客様の方です! こんな男に、格好つけさせてくれたわけですよ…。
というか最近、僕自分の店でも雑な扱いを受けるんですね。社長なのに。そこが最高なんですけど、今日は久しぶりに「俺すごかったんや……」って、ちょっと嬉しくなってきました(笑)。
君は「モテるとは何か」を、勘違いしていないか?
帝さんを追いかけ、ヒカルさんも1億円プレイヤーとなられるわけですが、そこまでモテる秘訣って一体何だったんですか?
鳳帝:
ヒカルくんも同じだと思いますが、モテるのは当たり前なんですよね。モテて当たり前、そこから先のプロとしてモテるための努力はしましたけど……。
プロとしてモテる。
鳳帝:
今group BJさんではホストくんたちが歌ったりしていますけど、まさに「会いに行けるアイドル」みたいなものだと思うんですよ。アイドルがすごく努力して自分の魅力を生かした実力を身につけるように、ホストも一般のモテる男子とは格が違うクオリティーを、持ち合わせていないといけない。
その意識を持つところから、始めるんじゃないですかね? あかん、先生みたいになってる!
一条ヒカル:
先生ですよ(笑)! それ、すごくわかります。やっていること全てと言っても過言ではないくらい、話し方・歩き方・指先まで、僕の振る舞いは「一条ヒカル」のために作り上げてきたものですから。 プライベートは、ここまでしないです(笑)。ただ、それが女性にモテるためだけかと言われると、誰にでも気を遣うし、それこそタクシーの運転手さんにも気を遣います。
モテる人って、空気を読んで雰囲気を作ったり、人に対する気遣いが半端じゃない。それがほぼオートマチックにできるほどやり込んだ人こそ、プロのモテというか……。
そうすると、女性にモテることを考えるというより、もはや一緒に空間を共にする人全員に好かれる力というか……。
一条ヒカル:
女性にだけモテるやつなんて、モテへんやつだと思います。
鳳帝:
本当にそうだと思う。あと、まずは女性を知ることから始めるのではないでしょうか。女性っていい意味で二面性があって腹黒くて、本当に素敵な生物。女性が自分よりも上の生き物だと、理解することが大切だと思います。
一条ヒカル:
めちゃめちゃわかります! さっき帝さんが「先生みたいになる」っておっしゃっていましたけど、僕も人に教えることが増えた分、女性に話すときもそうなる瞬間があるんですよ。これは、絶対に気をつけないといけないことですよね。僕の中でも絶対的に賢いのは女性なので、その女性に向かって理屈っぽくドヤ顔で話すなんて、もうカッコ悪いの極みですよ。
鳳帝:
自分もつい先日、20歳のお客様のところにヘルプについたんですけど、「ハイー!」言うて話聞いてましたもん(笑)。明らかに自分より精神年齢が上なんですよ。敵わん。
所詮ホストは、「格好つけさせてもらってる」し、「ドヤ顔をさせてもらっている」。その真理がわかれば、モテるんじゃないでしょうか?
一条ヒカル:
「マウントを取ろうとするやつはまずモテない」、ですね。
鳳帝:
それをね、まずは従業員にも理解してもらうところから。ここを踏み出せるかどうかが、まず一歩目ですよ。ここがなかなか、難しいんですけどね。
「一流から超一流へ」目指すべき最強のホストクラブとは
お二人とも今は経営者となられましたが、プレイヤー時代と苦労は違いますか?
鳳帝:
めちゃめちゃ違いますね。もうねー、ANARCHY立ち上げの初期は、地獄でした。
一条ヒカル:
えっ意外です!
鳳帝:
僕が完璧にプレイヤー特化型だったので、運営に回った時の苦労というのはもうね……。オーナーとしては、ゼロからの勉強です。4年目を迎えて、ようやく自分のビジョンへの最低ラインに立ったなと。
一条ヒカル:
そうだったんですか……。仲間と一緒に叶えたいビジョンがあるとして、まずは全員の目線を揃えるのが経営者の仕事なんですよね。ただこれが、みんなあっちこっち向くから、一人ひとりに「こんな風にしていきたい」と伝え向き合う作業が、めちゃめちゃ大変で。
鳳帝:
そう。それを3年間、ずっとやっていました。
一条ヒカル:
すごい! これを3年間って、相当な精神力がいるんですよ……。大体みんな伝えきれなくてお店を閉めたり、この程度かなと見切って、無理に次に進もうとしますから。
鳳帝:
惰性でもなんとかイケるんじゃないか、ってね。あー、ヒカルくんはわかってくれる! めっちゃわかってくれる人!
一条ヒカル:
もう根気しかなくて、仲間を想えなかったら絶対に続けられない。
鳳帝:
この経験があったからこそ、ここからはお店の文化を作らねばと思うんです。女性に対する価値観やビジョンを浸透させると共に、売れるホストを育てていかなければならない。ある程度のラインまではなんとか出来るんですよ。そこから先の「プロ」をどう育てるか。
その点、一条ヒカルくんの教育はすばらしいですよね。本当に尊敬しています。
一条ヒカル:
そんな風に言っていただけるとは……光栄です。
鳳帝:
未経験から1億円プレイヤーを育てて、一流店以上に仕上げているわけでしょう。圧倒的な育成力ですよね、それが4店舗も。
一条ヒカル:
ありがたいお言葉です。でも、まだまだ不安がないとは、言い切れないんです。売上・従業員の数・質……同業の中で「あの店はすごい」と認められるラインってあるんですよね。それって、一度超えれば安泰ではなくて、いろいろな要因ですぐに揺らいでしまう。
例えそのお店のナンバーワンが抜けたとしても維持し続けられる、店の文化が濃いところでないと、なかなか難しいんですよね。 「その人ありき」になりがちなお店が多いからこそ、文化の醸成に力を注ぐというのは、完全に同意です。
鳳帝:
土台がしっかりしないと、ある一定以上には絶対に到達しない。だからこそ、人間力から育てるっていうのは、いいお店作りには欠かせないんでしょうね。ヒカルさんはそれがうまいんだよなー。
一条ヒカル:
ただ圧倒的に違うのは、うちは未経験者の入店が多いので、ある種教育はしやすいんですよ。帝さんのところは他での経験を積んだ移籍者も多いじゃないですか。 実力を持って入店してくる方々に、さらに自分のお店での教育を入れるって、僕には不可能なんじゃないかと……。
鳳帝:
自分はもう、ひたすら根気よく向き合い続けてるスタイルしかなくて。怒らないし、甘いなぁとも思うんですけど、それが自分なので貫くしかないんですよ。
BJさんは、真っ白な子を0から育て上げるプロです。うちは……一人ひとりが持ったポテンシャルを、タイミングに合わせて細かくアップグレードしていく、という感じですかね。
それも今年からようやくできるようになったから、本当にペーペーです。でも、これが正しいと思えるまでになれたので、ひたすら待ちます。「待つ、向き合う、伝え続ける」。
一条ヒカル:
まさにですね。「個性を生かす」って、生半可なことではない。
鳳帝:
もうこれを貫くしかないよなって。「ホストクラブが好き」という自分のルーツがあるからこそ、土台がしっかりしたホストクラブを作りたいんですよ。だから、惰性で次のステージには進まない。そう決めたから、やり切ることが当たり前になっただけなんです。
うちの店は年齢層もバラバラで、個性もジャンルも混在している、すごく好きな空間なんです。いろんな子がいて、それこそポンコツと呼びたくなるくらいの子もいるけど、それも含めてホストクラブなので。今はね、ちゃんとポンコツも笑顔なんですよ。それがめっちゃ大事!
一条ヒカル:
めちゃめちゃすばらしいですね。帝さんは、居場所を作るのが上手なんだなと思いました。「ここに居ていいんだ」って、思わせてくれる。そう感じられると、仕事はすごく楽しいと思うんですよね。小さくても「今日は俺これをやったんだ!」と実感させてくれる環境。
今は売上が少なくても、その笑顔を見て指名してくれる人がいるかもしれない。売れる確率が、どんどん上がっていくんですよね。
鳳帝:
本当にね、癖が強い子ばっかりなんで(笑)。
この志を貫いた先に帝さんが目指すビジョンは、一体どんなものですか?
鳳帝:
ホストクラブにおける理想のビジョンって、全員共通じゃないかな。 「楽しくて、売上があって、バチバチしていて和気あいあい」それらを兼ね揃えた一流のお店をつくることです。
一条ヒカル:
最高ですね。
「一流」。お2人にとって、「一流の定義」とは、どのようなものでしょうか?
一条ヒカル:
維持できること、ですかね。売上1,000万・指名100本いったらゴールじゃなくて、そこから落とさない。店のレベルも同じで、現状から落とさない努力をし続けることです。
鳳帝:
好成績が、当たり前の人たちですよね。そこからさらに、人がワクワクするような驚く結果を出す、期待値以上の人たちが「超一流」。そこが、目指したいプロの姿です。
プロ野球選手だって、めちゃくちゃ練習するじゃないですか。ちゃんとコンセプトを持って、目標を細かく設定して。プロってそういうことだよなって、ようやく伝えられるようになってきました。 とは言え、オーナーがまだまだポンコツですけどね(笑)。
あとはもう、歌舞伎町を楽しみ続けることですよ。歌舞伎で生まれて、育った者として、この名前を使ってこれから面白いことができるなら、どんどん楽しみ尽くしていきたいと思っています。
<お知らせ>
■『CLUB ANARCHY』が2020年11月4日に拡大移転しました! 鳳帝が本気で作る「超一流店」を、是非体感してください。
■group BJから、北海道は札幌に新店舗『CLUB DARLIN SAPPORO / ダーリン サッポロ』がオープン! 完全新規店で一緒に働く仲間を募集中です。詳しくは公式Twitterからどうぞ。
取材協力:合同会社 LA BOUSSOLE
取材・編集 柴田佐世子
執筆 伊庭詩音
撮影 池田実加
監修 柴山由香
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